グレンタレット

ハイランド大虐殺
グレンタレットのウイスキーキャットのタウザーの物語は、グレイフライヤーズ・ボビー（スコットランド版忠犬ハチ公）のような哀愁ある物語でこそないが、彼女の記録は素晴らしいものである。
一匹の猫が、この蒸留所の長い歴史の中でも輝かしい記録を残した。
パース州のクリエフの北西約1マイルにあるグレンタレットは、1717年にはすでに違法ウイスキーを生産していたという教区記録で知られる場所にあり、1775年に設立された蒸留所はスコットランドで最古の蒸留所であると主張している。
年間120,000ガロンを生産する素晴らしいハイランドモルトウイスキーであるが、人々の記憶に語られるのは１987年にタウザー自身が死ぬまで、24年の間になんと28,899匹のネズミを捕まえたということだ。
毎日平均3〜4匹のネズミを周囲の畑から捕まえて、毎日のようにスチルハウスのフロアに置いていったという。
長い蒸留所の歴史の中で、グレンタレットでは９匹の猫を飼ってきたという。
蒸留所は1775年に設立され、1823年の酒税法改正によって正式なライセンスを取得。
狭い峡谷が立ち並び、その片方を丘に挟まれたその土地には展望台を設置し、衛兵や収税吏の来訪をあらかじめ知ることができたという。
このように恵まれた土地では、それ以前より違法な蒸留が盛んになっていたことも理解できる。
この土地のもう一つの恩恵は、タレット湖の水質の良さにもあった。
1887年に作家のアルフレッド・バーナードが観察したこの作品（蒸留）は、もともと密輸業者の手にあったと報告されており、川への便利な斜面だけでなく、タレットの水は、王国のどのものよりも綺麗であると言われており、蒸留のために必要なすべての特性を含んでいるという。
ベッコンジーから流れてくるその水は、その柔らかさで有名であった。
現在は丘の上にある100,000リットルの貯蔵タンクから蒸留所にパイプで給水されている。
バーナードの訪問時には、トーマス・スチュワート氏の所有権の下で、収税吏との関係は双方にとって合理的で良好な関係性を築いていたという。
1887年、ウイスキー産業は健全な状態にあったブームの年には、需要に対して供給が追いついていた。
クリエフにある魅力的な小さな町に到着したとき、アルフレッド・バーナードは幸せな気持ちで溢れていたに違いない。今日の訪問者とは異なり、ビクトリア時代にはこの美しい場所を、電車で旅する特権があったのだ。 "それは素敵な一日だった"と彼は書いている。超越的な美しさを誇るその谷は、多くのアーティストにとって完璧な楽園であった。アーティストはキャンバスにその美しさを保存し、詩人は歌や詩で多くのロマンチックな情景を祝っている。
主要道路から谷に分岐した川沿い道にでる。数え切れないほどの岩場が浮かぶ、活発な渓流で、幅は約60フィートにもなる。この地点から、谷は誘い込むように魅力的に広がっていく。両側の丘が時に重なりあうように近づいているようにも見えるが、峡谷の谷間には河川や道路に十分な幅を持ち、山の上部にある谷は隠れずに見渡すことができる。
第一次世界大戦中、グレンタレットは閉鎖され、その後、ミッチェルブラザーズの所有権のもとで再開されたが長くはもたなかった。
1921年にはミッチェルズは蒸留所を閉鎖し、貯蔵のためだけに建物を保持した。
その後の景気後退と米国の禁酒法により、スコッチウイスキー産業は例外を除いて大半が苦しんでいた。グレンタレットの小さな隣人、ピットロッホリーにあるエドラダワーは、禁酒法をかいくぐってアメリカとの取引を強くし、繁栄した。
それがマフィアによって支配されたという噂が浮上するほどであった。
しかし、グレンタレットはその繁栄にあやかれることはなかった。
1923年までには、その設備は取り除かれ、1928年には隣接する土地所有者、マレイ・オブ・オクタタイヤーに保管庫の用途で買収された。
その後、グレンタレットでは40年以上の間蒸留が行われていなかった。
しかし、幸運は再度グレンタレットに訪れた。
1959年に、ジェームス・ファーリーの知識、ビジョン、そして努力によって、著しい再生が行われた。フィリップ・モリスは次のように書いている。「既存の建物の一部は稼働開始したが、多くの調整と追加が必要であった。
新しい倉庫を建設する必要もあった。
1963年以降、蒸留所の敷地内にある公共道路沿いに6箇所の貯蔵庫が建てられた。
全てのオペレーションはフェアリー氏自身によって計画、監督された。
早い時期に建てられた施設にも新しく小綺麗に塗装されたことによって、初めて蒸留所を訪れた人間には、建物の外見では新旧の区別がほとんどできないという。
ジェームス・ファーリーは、1981年フランスのリキュール会社コアントローに引き継がれた後も、グレンタレットの操業に携わった。しかし1990年には他の多くの蒸留所と同様に、ハイランド・ディスティラリー社の傘下に入った。
多くの他の蒸留所と共にグレンタレットの第二の人生の特徴は、観光に非常に大きく依存している。
蒸留所を運営するのはわずか6人だが、忙しい時期に受賞経験のあるグレンタレットのビジターセンターでは約50人のスタッフを雇用している。
忙しい一日には2,000人もの人々が来場し、年間20万人以上が訪れるという。
蒸留所までの道のりは、アルフレッド・バーナードが、最高の1日であったと言わしめた、100年以上前の晴れた日の景色と今もほとんど変っていないだろう。
太陽の光に照らされた建物が白く輝き、スマートな黒と白のキャンバスが風に吹かれている。
徹底的に修復された建物、雑草のない砂利の庭園、レストラン、バー、そして視聴覚ディスプレイは、何世紀も前の農村部のイメージからかけ離れている。しかし、それまでの小さな蒸留所の印象を残しつつ、観光業としてうまく利用している。