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フェッターケアン

ソサエティ初ボトリング 1991年
ェッターケアンで起こる流水の真実 ポットスチルから液体が流れ落ちているが、特段、蒸留所の人間は誰もパニックに陥っていない。 アンソニー・トゥルーンは、スコットランドで二番目に古い、認可蒸留所で起こる不可思議な現象について調査した。 モルトウイスキー蒸留所では、それぞれ印象的なものがあり、時に説明を必要とするものもある。 例えば、マネージャーオフィスの壁に、掛けられた銅板のプレートに手書きで書かれた枠入りの通知書や、外に置かれた、真鍮で出来たチューブ状の不可解なパーツ。 そしてフェッターケアン蒸留所では、蒸留器から液体が流れでている。 それはあたかも、スピリッツが深刻な漏出を引き起こしているかのように見える。 もしそうであれば、大惨事である。非常用のベルが鳴り響き、人々はバケツを持って走り回っているだろう。また、空気中には独特で、非常に高価な臭いが充満しているはずだ。 しかし、これらのどれも起こってはいない。すべては通常通りなのである。 この無色の液体は、スチルのネック部分のエレガントな曲線部分のすぐ下に取り付けられた冷却装置から流れ落ちている。 そしてその流れ落ちる液体は、下部フランジのすぐ上部全体を囲んだ溝で回収され、循環される冷却水であるのだ。 私が知っている限り、他のモルトウイスキー蒸留所はこの冷却方法を使用していない。(ただし、ホワイト&マッカイの旗下でフェッターケアンと関係の深いダルモア蒸留所はまだウォータージャケットに身を包んでいる) それは、誰がどのような経緯で始めたのか、誰も確信には至っていないし。 そして誰もそれがどう重要なのかを説明することもできない。 蒸留事業において頻繁に直面する根拠を持たない伝統的習慣である。 もしそれが重要なことだとしても、すべての蒸留所に共通するわけではない。 その原理は十分に有用に見えるが、その有効性を測定する科学的データを作成することはできないのである。 しかし、それは常にフェッターケアンで行われてきたことであり、今後もこのスペイサイド南東部にあるキルカーディン村のこの場所で、軽く金色のスパイシーなモルトウイスキーが生産される限り、それが続けられていくことは明確であろう。 蒸留所のマネージャーであるスティーブ・トゥラウィックは、スチル上部に取り付けられた冷却装置は、樽の中に充填される最高級のウイスキーとなる、スピリッツのミドルカット部分が流れている時にだけ使われると説明する。 より冷たいネックに当たった重く、望ましくないスピリッツがアルコールの沸騰するもとの場所に戻される「逆流」作用を助けるために用いられる。 ミドルカットが、次のバッチに再分配されるフェイントに近づいたとき、冷却水は止められる。 1824年に設立されたフェッターケアンは、スコットランドで二番目に古い認可蒸留所であると言われている。 優雅な中庭と長く背の低い熟成庫、熟成中のウイスキーの樽が木製レールに3段に積み重ねられた、古き良き習慣を見ることができる。 これらの熟成庫は14個あり、華麗なウイスキーの香りを漂わせている。 頑丈に組み立てられた、ブロック造りの豪華なビジターセンターには、かつて肥やしが保管されていた場所だという。 現代では、床はより高価な物に改装され、古き良き痕跡と併設されて使用されている。 現在ではフロアモルティングはほとんど行われていない。 麦芽は購入され40キロのビンに仕込まれ、貯蔵されるからである。 しかし、ここでは、2つの木製の車輪を備えた不思議な形の手押し車(スティープ・バロウと呼ばれるもの)を見ることができる。 100トンにも及ぶ湿った穀物を上部にあるハッチより積み込み、床の端から発芽するように配置するために使用していたものである。 現在では乾燥された麦芽は大型トラックによってフェッターケアンに運ばれているが、きちんと価値のある尊敬を受けて扱われている。 サンプルを採取し、香りを確かめ、手のひらですりつぶしその状態を確認する。 それらはマッシュタンに補充するため、10%のハスク、10%のフラワー、そして70%のミドルの割合で粉砕される。 これらの割合は、良好な排水と最大の抽出を得るために、注意深く監視しなければならない。ジグソーパズルのようにぴったりと嵌められたステンレス鋼板製のロイタータンが底部にある。これは清掃のために解体することができる。 ウォートはウォッシュバックに補充する前に約21℃に冷却する必要があり不適切な高い温度では酵母を死滅させてしまう。 この温度調整のために、フェッターケアンでは、1938年にロンドンのアルミニウムプラント&ヴェッセル社によって作られた冷却設備を使用している。(業界最古のものであろう) 発酵にはオレゴンパインのウォッシュバックが8基使用される。 フェッターケアン蒸留所は、醸造酵母を添加した一次培養酵母を使用しているが、培養酵母のみでの発酵の実験も行っていた。 それぞれのウォッシュバックは26,000リットルのウォートが仕込まれ、54時間以上の発酵を続けられる。 2組のスチルは、毎年極上のモルトウイスキーを160万リットル生産することができるという。 多くのモルトウイスキー蒸留所と同様、フェッターケアンもビジターの受け入れもしている。ツアーの一環として、ガイドは訪問者を保税倉庫に案内し、満たされた樽が静かに錬金作業を行っている様を見学できる。 8ヶ月かけて、熟成庫の小さな区画「デボンデッドカプセル」に人が立ち入れるようにし、訪問客はガラスの壁の後ろから静かにその様を見学できるのだ。 そこから目立つ位置に1939年のダルモアのバットとクォーターカスクが置かれている。「それらを最初に詰めたものは、2000ポンドで日本に販売された」とスティーブ・トゥラウィッツは 囁いていた。 毎年、およそ3万人の来場者がフェッターケアン蒸留所に見学に訪れる。 しかし、一度に8人までしか、「デボンデッド」カプセルに入れない。 その上部には穿孔が施されており、成熟したウイスキーの香りが8本のホースを通して伝わって来る。本当に素晴らしい香りがする。 それは、混ざりあった歴史の香りである。 深く息を吸いこんで、それらの芳香を外に連れ出すことができるのだ。

1824
稼働中
Fettercairn, AB30 1YB
ハイランド