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ラガヴーリン

ソサエティ初ボトリング 1995年
アイラ島の風味の集約 アイラ島の南海岸には “Lagganmhoullin”(くぼちの水車小屋という意味)の愛称で呼ばれる点在する小屋がある。 大西洋から吹く南偏西風の強い風と激しい波に何度も晒された荒涼な場所であるが、穏やかなイメージを持たせる表現であることは驚きだ。 「蒸留所は小さな湾の先に建ち、その周辺は海からそびえる巨大な岩に囲まれている。その岩肌は荒ぶる波によって削られ、奇妙な生物が海から這い上がっているかのように見える。」1885年に蒸留所を訪れた際にアルフレッド・バーナードはこう残している 1156年、アイラ島の西海岸で起きた大きな海戦が勃発した。 その戦いでサマーレットがデーン人からインナーヘイブリティーズ諸島の支配を奪い、島の最初の君主となった。 ラガヴーリン港はまさに彼の勝利にとって重要な拠点となった。 またサマーレットの孫、ドナルド1世はその場所にダンヴァイグ城を築き、艦隊を守ったとされ、それは今も蒸留所を見下ろせる場所に現存する。 1800年当時、島の君主であったアンガス・オグの傭兵としてイーラッハ(アイラ島の男たち)は1314年のバノックバーンの戦の際にロバート・ブルースを支援するためにこの港から出航したという記録もある。 連合法の後、英国王室へのキャンベル(その時代の島の君主)の忠誠心が認められたことと、首都エジンバラから離れているという理由で、アイラ島とジュラ島は1707年から1823年の間、イギリスが定める間接税の免除が認められた。 そのため地主たちは自分たちで島民から税を徴収し集めておくことが許されたという。 結局、非常に稀な機会でしか税収は集められなかったという。 このような背景をもとにアイラ島ではウイスキー造りが盛んとなり、1742年にはラガヴーリン湾の周辺に10箇所ほど蒸留所が存在していたという。 18世紀末までにそれらの一部は淘汰され、現在ある蒸留所を形成している。 アイラ島の蒸留の歴史は、海との密接な関係の中で築かれてきた。 大麦は海を渡って運ばれウイスキーは海から輸送されていた。 ラガヴーリン蒸留所では独自の輸送船を所有し、1924から1956年までの間アイラ島からグラスゴーまでの輸送に使用していた。 海岸沿いに立つ蒸留所の通気煉瓦の白い壁には海水がぶつかり定期的に洗浄される。そのため蒸留所周辺、そして内部の倉庫の床にも塩水の水たまりが出来るという。 そのためラガヴーリン周辺で出来上がった高いコケの含量を持つ泥炭は、海の風味が染み込んでいるという。 スコットランドの北西部の高地や島々、そしてもちろんアイラ島には自然発生の他の可燃性物質(石炭など)がほぼ存在しない。 そのため泥炭を使用することはごく自然なことであった。 歴史的に言えば、ラガヴーリン蒸留所の麦芽は泥炭だけを使って乾燥されていたため、1世紀ほど前のラガヴーリンのウイスキーは今よりもさらに燻った味であったことが推測される。 現在では、ラガヴーリン蒸留所はポートエレンにあるユナイテッド・ディスティラリーズ社製の麦芽を使用し、フロアモルティングは行っていない。 麦芽はラガヴーリン独自のレシピ(ガスで特定の時間乾燥させ、アイラ産の泥炭で特定の時間乾燥させる)に基づいて生産される このようにコンピュータ制御のドラム式乾燥で作られた麦芽は高度な精度をもち、常に同程度のフェノール値を保証することができるという。 島の水源には泥炭が多く含浸されているため、ウイスキーの色にも影響を与えるという。しかし観光客は浴槽の水が汚れているとクレームを入れることもあるのだとか。 ラガヴーリンの仕込み水は、海抜200mの高さにある近くのロッカン・ショーラムから来るものと同じ水源を持つといわれる。 この柔らかい水は、泥炭層を通って蒸留所の2.5マイルほど離れた丘陵地から流れてきている。 ウイスキーの熟成では樽の中で毎秒空気の入れ替わりが行われ、スピリッツが柔らかく成熟するにつれてアルコール度数とその質量が失われる。 スピリッツを満たした樽は周囲から空気と同様に、その周辺のアロマも樽内に取り込む。 ラガヴーリンの場合、海藻、鮮魚、周辺にある新鮮な空気を吸収し潮風の影響ももろに受けている。 現在蒸留所のプロダクションマネージャーであるドニー・マッキノンは、アイラ島で生まれ育ったアイリーク(アイラ島民)で、過去34年間に渡りラガヴーリンで多くの仕事をこなしてきた。 彼は進歩に伴った様々な犠牲を後悔しながらも、「品質管理はこれまで以上に優れている」と誇らしげに語る。 ラガヴーリンの蒸留器はオニオン型のスチルで、球根部の根元から頂点までは比較的背が高く、斜めに緩やかに下がるラインアームを持っている。それによって作り上げられるスピリッツは、「泥炭の功績に対するスコットランド人の賛美歌」と喩えられるほどである。 ラガヴーリンは常にフルボディなモルトウイスキーの中でも常に最上級の評価を受け、泥炭由来の美しいマホガニーカラーに仕上がっている。 潮風の影響を全体的に持っており、塩味が強く、それがピートの香りによって包まれている。シェリーカスクで熟成されることによってさらに甘味と深みが引き出されている。

1816
稼働中
Lagavulin, PA42 7DZ
アイラ