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アイルオブジュラ
ソサエティ初ボトリング 1986年
島の優しい王子様
島で作られるすべてのウイスキーが、泥炭と海藻の風味を持っているとは限らない。
アンソニー・トゥルーンは、ジュラ島で珍しいサラブレッドのウイスキーが軽やかにスチルから出てくるのを見に行った。
文学に造詣がある人間はジュラ島と聞くと、ジョージ・オーウェルと“1984年”を思い浮かべるであろう。オーウェルは1948年にこの近未来小説を完成させた時、彼は島にあるバーンヒルの農舎に住んでいた。
この時代から大きく2つのことが変化した。
1つ目は、小説で設定される時代が今では過去となり、エリックブレア(別名ジョージオーウェル)の素晴らしい想像力はもはや過剰に見え過ぎないということ。
「ビッグブラザー」のような不吉な存在と、屈折した思考による支配は、今日の私たちにとっては非現実的なものではなくなった。
そしてもう二つ目は、ジュラ島の蒸留所が事業に復帰したことである。
それは1810年に設立され、60年後に再建されたと考えられているが、第一次世界大戦中には閉鎖されていた。
そして再建後の1963年に再びモルト・ウイスキーを生産し始めた。
エリックがジュラ島の海岸沿いから数マイル離れた場所で、タイプライターにかじりついていた頃には、このヘイブリティーズの壮大な環境の中でありながらウイスキーの生産は行われていなかったのである。
ここ大きな疑問がある。
「1984」を彼が執筆した際に、ジュラ島にもしウイスキーが存在していた場合、この物語はこのような悲観的なものになっていただろうか?
文学的な純粋主義者はこれを些細な問題として見るかもしれないが、ウイスキーの純粋主義者はそうではない。
ジュラウイスキーの魅力的な特徴は、アイラ島から泳いで渡れる距離にあるにもかかわらず、そこで作られる7つのウイスキーとは非常に逸脱している。
経験値の高い飲み手は塩味を感じるかもしれないが、アイラ島のウイスキーのような海藻の刺激は見当たらない。
蒸留所のマネージャーであるウィリー・テイトは、成熟の段階で、ジュラの麦芽に風味を誘発するようなことはしていないと強調している。
製品の10分の1以下がシェリーカスクで熟成され、残りはスコッチウイスキーの空き樽にて熟成される。
そのため、本来のバーボン樽由来のバニラの影響は大幅に取り除かれている。
これが不必要に強調されていないジュラのウイスキーの性格を反映していると、彼は言う。
インヴァーゴードンが所有する、この島のウイスキーはどこからこのような柔らかさが引き出されているか?
それは、Bhaille Mharghaidhと呼ばれる泉の柔らかい水をマッシュに使用することに由来する。
その水は岩の上を流れているため、泥炭の影響をあまり受けていない。
麦芽大麦(実際にはアイラ島から来ているものもあるが、その数はわずかである)は、お隣のアードベッグやラガヴーリンは50ppmもあるのに対して、ジュラのフェノール値は2ppmである。
そしてジュラの蒸留器もその要因の一つとなっている。
2組のウォッシュスチルとスピリットスチルは、業界でも一、二を争う背の高さを持ち、軽快で純粋なスピリッツを作り出す。
ウォッシュスチルとスピリットスチルのサイズはほとんど見た目に違いがない。
両方とも銅製のコイルに熱したスチームを送って関節的に加熱される。
48,000リットルのウォッシュは、二つのウォッシュスチルに分けられて蒸留される。
清掃や点検のために開けるスチルメインドアのヘリ辺りまでウォッシュは注ぎ入れられる。
ウォッシュが沸騰すると、急速に液体がスチルのネック部分に上がっていく。
そうなった場合はスチームを止める必要がある。
これは、スチルにブレーキをかけると呼ばれている。
私はその表現がお気に入りである。蒸気機関車のようにブレーキをかけるのだ。
そうしてゆっくりと温度を上げていきスチルの中で、約8時間のペースでウォッシュに残るアルコールが全て取り出されるまで続けられる。
若干小さなスピリットススチルでの二回目の蒸留は、より緩やかに行われる。
この蒸留は11時間ほど実行されるが、その3分の1の間に貴重な「ミドルカット」が生成される。
各スチルには2つのスチームコイルがある。ミドルカットが実行されている間、これらのコイルの1つがシャットダウンされるので、若いジュラは非常にゆっくりと優しく世界に生み出される。
誕生時のアルコールは約70%になり、そこに仕込み水を加えて63.5%まで減少させる。
そしてその時点から、ウイスキーは樽に詰めるまでの間、オーク製の容器に保存される。
ジュラ蒸留所ではもっと多くのことが学べるが、今回は蒸留のプロセスに集中して言及している。なぜなら、この独特なウイスキーの特徴を形成する一番重要なポイントであるからである。
1810年に建てられた職人仕様の屋根の梁を備えた土床の熟成倉庫は、現在樽の修理場として使用されている。
設置時にはユニークだったマッシュタンとウォッシュバック用のCIP(クリーンインプレース)のシステムは培養した酵母とブリュワリー酵母のバランスをとり、迅速な発酵開始と長時間発酵を可能にしている。
ジョージ・オーウェルはジュラ島の絶世の景色に精通していたであろう。
しかし彼はこの素晴らしいウイスキーの存在に出会えなかったことを後悔すると確信している。
設立年
1958
状態
稼働中
場所
Isle of Jura, PA60 7XT
地域
アイランズ