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ハイランドパーク

ソサエティ初ボトリング 1984年
今もなおピートの煙があがる場所
スコットランドの最北端にある蒸留所では、ピートの煙がまだキルン塔の屋根から漂っている。
パゴダ屋根の存在は、それがシングルモルトの蒸留所だとすぐに認識できる特徴である。パゴダ屋根をなくしてしまうとウイスキーの蒸留所は何処にも見当たらなくなってしまうであろう。
それはシャトーを持たないフランスのワイン農場のようなものである。

1890年代になって、魅力的な煙突の機能を持つ、パゴダを備えた三角の屋根がモルトウイスキー蒸留所の正方形の窯の上に現れ始めた。
その高さと上部の通気孔部分の設計は、大麦麦芽を乾燥させたときに出る煙をスムーズに、外に換気することを可能とした。
1990年代以降、大半の蒸留所はモルトスターに製麦を委託しているため、キルン塔の機能は失われ、蒸留所の視覚的なアイデンティティとしてのみ存在しているかに思われるが、実はそうではない。
スコットランドの蒸留所の一握りでは、今なお伝統的な方法で麦芽の一部を自家製麦によって作っている。
オークニー諸島の、カークウォールの丘の上にある、スコットランド最北端の蒸留所
ハイランドパークもその一つである。
強い風に吹かれながら蒸留所の外に立ち、泥炭の煙が上がる様を見ることは今では希少な体験とある。
風の中に柔らかい穂の羽が消えていくように煙が静かに消えていく。
しかし、その内部では釜の中でピートが轟音を鳴らし、眉を一瞬で燃やしてしまうほどの熱を出している。
ハイランドパーク蒸留所のジェネラルマネージャーであるジム・ロバートソンによると、泥炭が燃えている中心部の温度は驚くことに1200℃にも達し、理想的には、800度に保たれることだという。ピートの乾燥床上部では、約60度の薫風が大麦を祝福しているかのように二日間かけて乾燥される。
約8tの浸漬大麦は、乾燥によって6,5tの重さになる。
この古くから受け継がれる乾燥技術は、本質的に精度の高いものではなく、乾燥した麦芽の状態を注意深く監視する必要がある。
塔の吹き抜けを横切るオークニーの強い風は乾燥させる時間を6時間ほど遅らせる場合もある。
ハイランドパークが使用する大麦の5分の1は自家製麦によるものである。
ピートは麦芽の水分含有量が25%を切るまで燃やされ続け、この12時間ほどの時間の間に穀物の好ましくない香りをハイランドパークらしい素晴らしい風味に切り替えることが出来る。その後、コークスが燃焼しきることで乾燥工程は完了される。

蒸留所で使用する大麦の残りの5分の4は、スコットランド本土にある製麦工場から海を渡ってもたらされるノンピート麦芽である。
ハイランドパークでは、島の独特なピート層から切り出された、ヒースを多く含むピートを使用する。
特別な形の掘削道具を使って、ホビスターの土手から切りだされる。
この掘削道具は従来手で掘られていた時代のブロックの形を、可能な限り再現するように設計されている。
この伝統的な作業はオークニー島だけで行われているものだとジムは語る。

蒸留所の大麦貯蔵所には600トンの穀物が貯蔵されている。
最初の段階で、バッチごとに2日間仕込み水に浸して発芽のプロセスを開始する。
その後、伝統的なフロアモルティングによって、少なくとも8時間おきに、大麦はブレードの代わりにパドルのついた、芝刈り機のような道具を使い手動で攪拌される。
手で引く鋤は発芽した根のもつれを解くために使用され、最終的に乾燥の準備ができる。
乾燥された麦芽は5,5時間かけて糖化される。
蒸留所は292ヘクトリッターの容量を持つ12器のウォッシュバックを保有し、2器分の仕込みを一組として次の工程に充填される。

ピーク時の生産では、週に13回のマッシングを行っていたが、現在は9回ほどだという。蒸留には2組のスチルを使用するが、スコットランドの蒸留所の中でも独特なドラムなだけあって控えめな生産量であるかもしれない。
ハイランドパークでは、約10分の1をシェリー樽にて熟成、残りはバーボン樽にて熟成され、いくつかのブレンドの構成要素となる。
12年もののシングルモルトには10分の1以上のシェリーカスク原酒が使用されている。
ジム・ロバートソンのオフィスには 1914年にアランウォーカー(ジョニーウォーカー家)から送られた言葉を飾っている。
そこには「私は転換の過程にある」と書かれており、ハイランドパークは飲むに値する唯一のウイスキーであり、ジョニーウォーカーは嘘つきなイングランド人への販売に適しているという考えについて書かれている。

しかしスコッチ・モルト・ウイスキー・ソサエティの会員リストを見れば、
イングランド人がいかにウイスキー飲みとして優れていたかがよく分かる。

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