ウイスキー概論

5大ウイスキーのスコッチウイスキーを業界30年の専門家が解説【ザ・スコッチモルトウイスキー・ソサエティ】【ウイスキー概論7】

「5大ウイスキーのスコッチウイスキーの香りについて知りたい」

この疑問に、ウイスキー業界30年の専門家がお答えします。

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細井さん

1. 5大ウイスキーの一つ「スコッチウイスキー」の香りのプロフィール

スコッチの文献上の初出は1494年のスコットランド財務省記録。

「スコットランドの修道院で修道士ジョン・コーに8ボルのモルトを与え、命の水(アクア・ビティー)を造らしむ」とある。

8ボルとは508kgに相当し、それから318Lのアクアビティーを造っていたとある。

その分量はもはや個人消費レベルを超えており、王侯貴族のための嗜好品として生産していた様である。

アクアビティーはウイスキーの語源ルーツである。

醗酵容器としては木の桶、蒸留装置としては銅釜が既に開発されていたと考える。

但し麦芽を上手く糖化・濾過するのは至難の技である。

現代は精密な濾過板を持つ濾過機と糖化濾過の上手なコントロールにより清澄な麦汁の採取が可能だ。

これがスコッチの高品質に繋がっている。

当時はそこまでの技術がなかったと考えられる。

となると粉砕した麦芽に適当な温度のお湯を加えてお粥状にしたものに直接酵母を投入して醗酵醪を造っていたのではないかと想像する。

醗酵したスープを作るような感じか。

それを蒸留すれば焼酎のように原料フレーバーの強い無色透明の蒸留酒ができたと思われる。

18〜19世紀に樽貯蔵が登場するまでは、飲みやすくするために蒸留液に香草を漬け込んだりもしていたようだ。

さてその後スコッチ製造法において色々な技術革新が続いていくが、発酵というプロセスにはあまりメスが入らなかった。

アルコール収率を上げるという目的で酵母の添加量を増やしたり、エール酵母の使い方を工夫したりはしているが。

20世紀になって香気分析技術が発展し始めるまでは、ウイスキーの香りと醗酵微生物の関係を紐解くことは不可能だった。

英国は化学物理の先進地域ではあるが、ウイスキー香気に関する生物学的な謎は残ったままだ。

筆者のきゅう覚ではスコッチ香味にとって重要なファクターは醗酵微生物にあると考えている。

他の方々も指摘しているようにスコッチの木桶醗酵槽に棲息する酵母・乳酸菌それに第三の微生物等は興味深い。

スコッチモルトの特徴といえば、原料香よりも、その様な微生物の醗酵フレーバーに彩られた高貴な香りにあると思う。

筆者は昔初めてボルドーの熟成した赤ワインを飲んだ時、この酒が葡萄から造られているというのが信じ難いほど未知のフレーバーを感じた。

昔のスコッチも何の原料から造られたか判らないという印象があった。

1822年スコットランドを訪れたジョージ4世は当時名声を博していた。

密造酒のグレンリベットを所望した宮内長官は八方手を尽くしていた。

その時食料貯蔵室係のエリザベスグラントに命じて大事な貯蔵庫を開けさせた。

そこには長く樽に寝かされて壜詰されたミルクのようにまろやかな、禁制品ならではの風味を持つウイスキーがしまってあった。

この記述は初期のスコッチの香味評価をした貴重なものかもしれない。

スコッチといえばピート香となるが、この「ミルクの様にまろやまな」は私が知りたいウイスキー香味のターゲットともオーバーラップする。

醗酵中の香味形成に関してはあらためてご紹介する。

以上。

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