ウイスキー概論

5大ウイスキーの北米ウイスキーを業界30年の専門家が解説【ザ・スコッチモルトウイスキー・ソサエティ】【ウイスキー概論5】

「5大ウイスキーの北米ウイスキーの香りについて知りたい」

この疑問に、ウイスキー業界30年の専門家がお答えします。

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細井さん

1. 5大ウイスキーの北米ウイスキーとは

ウイスキーが欧州北縁で生まれて、やがてアイルランド人とスコットランド人のアメリカ大陸への大量移民が始まった頃、ウイスキー造りも移植され生まれたのがバーボンとカナディアンの2つのウイスキーだ。

進取の気勢が強いアメリカ人気質の根源はアイルランド人が持ち込んだとも思えるが、彼らはアメリカの土地に最適な農産物であるコーンを原料に独自のウイスキー造りを始めた。

2. 5大ウイスキー(北米)①バーボンの香り

今でこそバーボンの味は一つの個性として確立し、広く受け入れられるようになっているが、以前はスコッチの味が本物で、バーボンの味は世界的に低く見られていた時代があった。

その原因はフーゼルアルコールが多いことに由来した。

特にイソアミルアルコールという成分が多い。

大凡3種類のフーゼルアルコールは、酵母で醗酵させた酒類には多かれ少なかれ存在する。

それらは固有のアミノ酸が酵母により代謝されることで生み出される。

原料の植物ごとに組成が異なる。

大麦麦芽の香気に慣れた往年の消費者からは、このフーゼルアルコールの癖が嗜好に合わなかった様である。

しかし、20世紀の後半には日本でもこのバーボン独特の風味が市民権を得てブームになったと記憶する。

30年ほど前からブームになった焼酎もそうであるが、あれよあれよという間に一大ブームが起きるのが蒸留酒の世界かも。

何故かと考えると、蒸留酒は味わいが欠落(香りが味わいを錯覚させている)しているので、品質構成要素がほぼアクアイアードテースト(後天的な香味)だからなのかと思う。

生まれつきの感覚では好き嫌いの判定ができず、その後の経験で好き嫌いが形成されていく部類の香味ということ。

だからスコッチを知らないで、バーボンウイスキーを好んで入門した人はその香味に抵抗がないということになる。私の場合は両方嗜んで育ったのでどちらも興味あるが。

少し深掘りするとバーボンの香りはフーゼルアルコール以外にも隠れた基調香がある。

フーゼル自体は度を越すと悪酔を誘発する取っ付きにくい臭いになるが、それ以外にクローブの特徴香であるオイゲノールやグアヤコールといったコーン原料由来の甘い香りが特徴的。

またバレルと呼ばれる中側をヘビーチャーした180Lと小さめのホワイトオークの新樽で貯蔵することが義務付けられているため、豊富なバニラ香やウイスキーラクトンといった甘い余韻のある香りが魅力的な香味バランスに寄与している。

3. 5大ウイスキー(北米)②カナディアンウイスキーの香り

カナディアンも同様にコーン原料主体だが、蒸留の仕方でバーボンより軽い香味の仕立てになっている。

そして原料の使い方として、両ウイスキーに特徴的なのはコーンに加えてライ麦を少し使用することだ(カナディアンはライ麦麦芽の使用もある様だが)。

ライ麦は他の穀類にはないアセチルピラジン等のスパイシーでスカッとトップノートに伸びる香りを醗酵で生み出す。

カナディアンやバーボンはコーンの甘さとともにこの香気を上手く使っている。カナディアンはバーボンに比べて、その軽やかなライの特性が高く味わいが軽い傾向。これは原料の使用の仕方と連続蒸留機の操作法による違いと思われる。

新大陸に渡って生まれたこの2つのウイスキーは、ともに新たな原料由来の香味特性が特徴と感じる。

以上。

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