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SMWSコード80.21(タイトル: ふわふわの質感と美味しいトッピング)

「80.21のテイスティングプレビューが見たい」

ウイスキー業界30年の専門家のテイスティングプレビューをご紹介します。

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細井さん

1. SMWSコード80.21(タイトル: ふわふわの質感と美味しいトッピング)

SMWSコード:80.21について

ストレートでも刺激が少ない。

たおやかに柔らかい熟成の効いたモルト。

クリーンな酒質故にカスタード様、キャラメル、バニラ様の柔らかい甘さが浮き立つ。

「ミルキーはママの味」的な。

クリーンにして角のとれたミルキーな風合いは、いかにして生まれるか。

まず綺麗な仕込み釜から理想的な麦汁採取。

次にシンプルに健全な酵母による醗酵。

内部洗浄の行き届いた蒸留釜での蒸留。

そして充分な前溜液(Foreshot)のカット。

本溜液から余溜液(Feints)への高めの度数での切り替え。

そして出しゃばらず、奥ゆかしくバニラ感の滲み出す樽での長期間の穏和な熟成といった要件が必要かと思う。

割水した時に雑味が浮き出てこないことや、脂肪酸エステルの充足感をみるとクリーンな醗酵が達成できていると思われる。

ぜひ、オフィシャルノートも合わせてご覧ください。

80.21のオフィシャルノートはこちらから

2. 香りの構成について

2. 香りの構成について

ただ酢酸エステルなどの溌剌としたフルーティーなエステル感は抑制的なので、波のない穏やかで柔らかい甘さが主体となっている。

この理由は醗酵醪をやや時間をおいてから蒸留しているのではと推理する。

特に醪に乳酸菌が関与してミルキーになっているとは思わないが、醪で時を経ることで、揮発性の高い酢酸エステルの割合が低くなっているのかと思う。

逆に醪熟成中に酵母の自己消化から香気の素となる無限の成分の断片が漏出する。

これらから派生するのは、蒸留後に香りを複雑にする無数の微量成分の集合であり、条件によってはプラスにもマイナスにもなる。

マイナスになる代表として、特にチオールなどのイオウ化合物はその種類と量によっては未熟臭の根源となる。

しかしこれらは熟成によって揮発したり、酸化したりして気にならなくなる。

幾つもある熟成のメカニズムの中で最も大事なものと筆者は考える。

チオールは別名メルカプタン。悪臭の代表格であるが、極めて揮発性が高く、焼酎製造などでは数ヶ月で揮散してしまうことが知られる。

問題はこれが蒸留中に熱変性してスルフィドという化合物に変化してしまう。

これらの成分は都市ガスの匂い、腐ったキャベツの匂い、清酒の老香(ひねか)といった酒質にしつこく悪影響を与え続けるものである。

イオウ化合物の中には、これらとは別にチオフェンなどのキャラメルや醤油の香気を構成する成分などもある。

これらは量が少なければ、このモルトのように柔らかい甘さ、波の立たない穏やかな内海を連想する香りの重要な構成要素になると筆者は考える。

いずれにせよこのモルトは13年という時を北の大地でじっくり熟成したために、未熟臭のみを削ぎ落として、他の香気の揮酸や差し出がましい樽成分の過剰な溶出もなくミルキーな柔らかさを獲得したのだろうと想像する。

南方の熟成ではこうは行かない。

1空きバーボン樽をバラして側板枚数を増やす。

そして太らせて組み直したのがホッグスヘッドである。

180Lのバーボン樽に対して250Lのホッグスヘッドは注入するウイスキーに対する表面積が少なくなり、より穏やかな熟成に向くこととなる。

この穏やかな樽での長期熟成こそスコッチならではの真骨頂。

以上。

ぜひこの機会に、80.21をお楽しみください。

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