蒸留所訪問:三郎丸蒸留所 Episode 1 (公開記事)

こちらの訪問記は5月7日以降にブログページにて集約される予定です。予めご了承ください。

若鶴酒造の三郎丸蒸留所のインタビュー

ザ・スコッチモルトウイスキー・ソサエティ 日本支部は2020年3月27日(金)に富山県砺波市三郎丸にある三郎丸蒸留所を訪問。蒸留所所長の稲垣貴彦氏にご自身のウイスキーづくりと地産を使用した製造方法についてご説明頂いた。

【ご案内】
三郎丸蒸留所所長:稲垣 貴彦氏
ハリーズバー高岡 バーマネジャー:田島 一彦氏
聞き手:SMWS日本支部 支部長 橋本

【令和蔵の昼食から】

―今日は一日宜しくお願い致します。

稲垣氏 ぜひ昼食と一緒にこちらを召し上がってください。

―三郎丸のハイボール缶ですね。 すごくピーティーですね。酵母の香りがします。

稲垣氏 はい、イーストから来る香りですね。干したほたるいかとの相性が抜群です。

田島氏 富山県民はシーズンになるとほたるいかを夜、海岸にすくいにいくのですよ。


稲垣氏 私は一昨日に出かけて300匹ぐらい捕れました。時に新月で南風、海が濁ってなくて、潮が満ちてくるときに取れやすいですね。今日の昼食は地元で捕れたものをご用意いたしました。

―令和蔵では、地産の物を使っているのですね。あと、非常に暖炉が温かい。

(*この日は大雨で、気温の変化が大きい日でした。)

稲垣氏 暖炉は、ミズナラ材を樽加工して残った部分を薪として使用しています。というのはミズナラ樽に使用できるのは10%にも満たないです。残りの90%をどう活用していくかも大事です。自社では燻製や薪にこのミズナラ材を使用しています。

稲垣氏 ここでご飯を炊いたりします。この敷地一帯は昔から地下水を使用しています。地下約40mから汲みだしているので、冷涼な水が一年を通じて得られます。だから夏にウイスキーを製造することができるのです。

―この竈はレストランのですか、あるいはスタッフ専用でしょうか。

稲垣氏 うちはレストランをやっているわけではなく、地域資源の循環の場としてかまどを使っています。とても効率が良く薪3本でご飯が炊けます。お越し頂く方には機会があればぜひお召し上がりいただきたいですね。

【熟成庫へ】

稲垣氏 正面に見えるのが第3熟成庫です。

―どのくらいの樽が収容できるのですか?

稲垣氏 元々は倉庫でしたが、修復しました。約1200樽です。うちには3つの熟成庫があり一つが蒸留所内の熟成庫、もうひとつが酒粕などがおいてある低温熟成庫、そして、ウイスキー専用の三番目の熟成庫です。

―それぞれの倉庫によってウイスキーのフレーバーが変わったりしますか。

稲垣氏 やっぱり温度が全然違いますね。特に酒かすを保管している低温熟成庫は夏でも20℃を超えないので、長期間の熟成ができると思っています。

―スコットランドの気候とすごく似ていて、趣がありますね。(この日は大雨強風で湿度が高く、珍しく温暖でした)

稲垣氏 そして、この通り天候悪いのが冬季の富山県の特徴です。

―天候の悪さはスコットランドっぽくてよいですよね。ウイスキーにとっては最高の環境ですね。

稲垣氏 そうですね。ここ三郎丸は日本海側で雪が降るので、冬場でも乾燥しません。気温は低く、湿度が高いですがマイナスになることは稀です。今年は珍しくとくに暖かいのですが。

―雪はどれくらい降るのですか?

稲垣氏 降るときで40,50cmぐらいです。完全に積もるのは1月からですね。12月に雪が降って、雨が降って溶けてを繰り返しながら、2月いっぱいまでは雪が降ります。

―雪の影響とかありますか。味の変化とか

稲垣氏 やっぱり冬場でも乾燥しないというのは熟成にとっては良い点だとおもいます。仕込みに関して冬は日本酒の製造があるのでいまのところ夏と冬の違いはわからないですね。

―エンジェルズシェアはどれくらいですか?

稲垣氏 3%くらいです。初年度はソーゲージロスがあるのでもう少し多いです。

蒸留所の看板がこれです。地元の伝統工芸である高岡銅器でつくられています。

―地元の名産ですね。

稲垣氏 銅をさび付かせることでこの色が表現されます。だから銅自体が発色しています。

この錆色を出すにはぬかみそなどをつけて焼いたりとか、柿のシブを塗ったりして色合いを出します。

―銅って今は何に使われるんですか?

稲垣氏 今はほとんどが美術工芸品や冷却関係ですね。昔はいろいろ使っていたのですが。

Episode 2 はいよいよ蒸留所内へ